小説更新

マリアの微笑み


「・・・という結論に至りました」


「ん。まぁなんというか、滑稽な話だが要はファンタジーだな」


「我々が言うには。ですね」


「この課題に関しての経過はどうあがいてもアレの持つ

マリアの力が必要になる。そのマリアがアレにしか従わない以上

こちらがどうすることもできない。アレはアレでアレだしな、」


「カインが試験してくれる事はないでしょうしね。

試験に関しても我々じたいやる気にはなりませんし・・・」


「マリアに核の複製が可能だとしてもそれを意図して行うことはない。

という旨だけを結果報告の末尾に書いておけばいい。それで終了だ」


「わかりました」


「それに、そろそろあの13番目の娘にも何かしらの答えが出てるはずだしな」


「・・・もしカインの心を受け入れなければ・・・」


「自我の崩壊を起こした末で消える」


「受け入れれば、それでもその瞬間から天使ではなくなる」


「結局消えるしかないのか・・・」


ヘカーテの声を聞きうなだれるドミニオン。

それを見ていたヘカーテは無言のままソファーから立ち、


「時間は無限にあれ、そこにいる者たちに与えられた許された時間は有限。

ときはその決着を容赦なく出す。どちらにせよ。それも運命だ」


そう言い捨てて机の方向にゆっくり脚を向けた。


「ただ、時に運命は、どちらにも傾くことのない道を開くこともある」


ドミニオンはその声を聞き顔を上げヘカーテの方向を見る。


「それを見つける可能性があるのもまた、そこにいる者たちだけだがな」


言葉が終わる頃にはヘカーテは元の大きさに戻りテーブルについていた。


「報告はしておいた。天使よ、自分の仕事に戻りなさい」


ドミニオンに届く声の大きさが部屋に響き渡る。

ドミニオンはソファーから立ち上がるやヘカーテに一礼し

その姿をその場から消した。空間を転移したのだ。


二人の向かい合っていたテーブルには空のワイングラスが二つ。

数枚の書類が置かれていた。が、突如として炎が立ち上り書類だけでなく

ワイングラスも跡形なく溶けてなくなってしまった。なぜか書類の残骸もない。

テーブルは綺麗な光沢をたたえていた。


複製されたのは前地の森で救われた方。転移した核が従来のプリンシパリティ。

この時には姿は男性だったが天使はもともと男性女性の区別がない。

しかしその存在理由、仕事などから、最も合理的な性別による変態がおこる。

プリンシパリティはもともと国家の動向やあり方を天界に報告、

また監視を目的とする。階級第7位の権天使である。

その中でも天界で情報を処理する側と地上に出向く側とに分かれ、

もとのプリンシパリティである6号は主に地上。13番は天界であった。

そのため戦うことがなかった13番は天界での仕事の中、

女性としての変態をとげていた。もちろん事故当時に帰還した当初、

ゴルゴダで再生を終えたプリンシパリティと号数がかぶる事態に

天界も驚き、検討の結果、オリジナルの6号を残し、

13番は淘汰消滅させる決断が迅速に決められていた。

しかし、そこに偶然居合わせたドミニオンが


「今こうして存在する以上何かしらの意味があるのだろう。

その意味がなす時を待つためにも特例として末番を与え任に付かせるが良い」


と存在を許されたという。(もちろんこのドミニオンは先程のとは別)

13番として許されたプリンシパリティはそれから自分の存在を

確固たるものとするためにしゃにむに働いた。天界側の仕事ながら

処理すべき情報は膨大で一国家に該当する情報量も

本来プリンシパリティ3人でやるべきを1人でこなした。

その多くの情報を扱っていたせいか、情報処理する上でたまに耳にする

悪魔カインの名を不思議に覚え、悪魔ながらに死神をしている。という話から

死神に紛れて人間の魂を食っている極悪な悪魔。という認識をしてしまう。

カインの持つマリアによって存在した天使。だが、その出生を知らない天使は

今、目の前のカインに槍を構えている。流れ出す涙を止めないまま。

                                            つづく
いらっしゃった方々
ついったあん♪
プロフィール

志士丸

  • Author:志士丸
  • 冷たい時代を打ち砕く
    孤高のヌンチャク武芸人

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